
迷惑メールに悩まされているうちに、ちょっとこらしめてやろう、撃退してやろうという気持ちになるのも無理はありません。
しかし一個人には行政が持つような権限はないので、できることには限界があります。また、やり方を間違えれば、結局のところ迷惑メール送信者と同レベルの行為になりかねません。
現在は迷惑メールに関する法律により、違反者に対して行政処分が下される仕組みが整備されていますから、それを利用するのが得策だと言えます。
ここでは迷惑メールを撃退する方法として最も有効な、行政の当該機関への情報提供という手段を解説します。実際に行政処分という撃退の結果に結びついているので、その実例もあわせて紹介します。そして、こうした撃退法を可能とする法律についても解説します。
迷惑メールに対しては、ルールに基づいた撃退法をもって戦いましょう。
1.対策や予防ではなく「撃退」する方法
1-1.間接的に撃退するか、直接的アプローチをとるか
迷惑メールに対する防衛策としては、届くのをブロックしたり、届いたものをフィルタにかけて除外することがセオリーとされています。いわゆる対策や予防と呼ばれるものですが、それらとは一線を画する発想で、迷惑メール送信者の違法な行為そのものを止めさせるという撃退法も考えられます。その手段としては、間接的な撃退法と、直接的な撃退法が考えられます。
1-1-1.間接的な撃退法
間接的な撃退法とは、行政の当該機関に迷惑メールの情報提供をし、行政処分してもらおうという方法です。多くの通報を受けた案件に対しては、しっかり処分をしている実績があります。
出典:一般財団法人日本データ通信協会
1-1-2.直接的な撃退法
ネットやソーシャルメディア上では、迷惑メール送信者を告訴したとか、奇抜な手段で諦めさせたとか、胸がすくような話に出会うこともあります。しかし、これらは理性的な手段と呼べるものではなく、効果も限定的です。よって、あくまでもエピソードを楽しむにとどめ、真似をしないようにしてください。
1-2.間接的撃退法の流れ
行政は、迷惑メール送信者の違法行為を断つよう、専用の機関を設けて情報収集をしています。一般財団法人日本データ通信協会・迷惑メール相談センターは総務省から、一般財団法人日本産業協会は消費者庁から委託を受けている機関です。そして集めた情報は、総務大臣および消費者庁長官による迷惑メール送信者への行政処分、また電気通信事業者による送信防止対策に活用されます。
1-3.当該機関への情報提供方法
上のフローの1にあたる情報提供の方法は簡単で、届いた迷惑メールを上記機関の受付用アドレスに転送するだけで済みます。パソコン・携帯のメールソフトを使った転送方法など、詳細な情報提供のやり方は、迷惑メール送信者への仕返し|自分ではダメ、情報提供で行政処分で解説しています。
1-3-1.日本産業協会
迷惑メールをspam-in@nissankyo.jpに転送するだけという簡単手順です。件名を変えたりする必要はありません。
日本産業協会「特定商取引法の表示義務に違反するメールの情報提供の方法」
1-3-2.迷惑メール相談センター
受信日時や違反メールの送信者アドレス、件名、内容などを記入して通報できます。単純なメール転送よりは手間がかかりますが、より内容の濃い情報を提供することができます。
2.情報提供により行政処分になった実例
機関への情報提供は、今すぐに撃退という結果は出ないものの、時間が経てば確かな結果をもたらしてくれます。ここではその例を紹介します。
2-1.株式会社Pに対する特定電子メール法違反に係る措置命令の実施
2014年6月、総務省及び消費者庁は「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」に違反して迷惑メールを送信していた株式会社Pに対し、法第7条の規定に基づき外命令を行いました。
≪概要≫
ウェブサイトの広告メールを、少なくとも2013年12月18日から2014年4月27日まで送信していたと確認されています。迷惑メール相談センターに対して、513人からのべ6950通の相談するメールがありました。
2-2.その他の事例
多くの通報が、行政処分のきっかけとなります。上記以前の直近10件の例は、以下の通り。少なくとも確認された送信期間と、措置命令日の関係を見ていくと、ここ最近は措置命令までのスピードが速くなっていることが分かります。
事業者名 | 相談のあったメール通数 | 少なくとも確認された送信期間 | 措置命令日 |
---|---|---|---|
株式会社M | 450人からのべ3026通 | 2014年2月4日~2014年5月1日 | 2014年5月15日 |
株式会社S | 247人からのべ12647通 | 2013年10月30日~2014年1月16日 | 2014年2月6日 |
株式会社N | 1760人からのべ13387通 | 2013年7月1日~2013年10月31日 | 2013年12月25日 |
株式会社I | 2536人からのべ33353通 | 2013年1月21日~2013年10月25日 | 2013年12月6日 |
株式会社G | 1543人からのべ34033通 | 2012年12月14日~2013年9月30日 | 2013年11月6日 |
株式会社A | 1654人からのべ45817通 | 2012年11月26日~2013年8月31日 | 2013年9月20日 |
株式会社U | 1251人からのべ71577通 | 2012年9月27日~2013年8月8日 | 2013年9月19日 |
株式会社C | 751人からのべ31721通 | 2012年7月21日~2013年3月31日 | 2013年5月17日 |
株式会社F | 1131人からのべ13006通 | 2012年10月10日~2013年2月26 | 2013年3月27日 |
有限会社N | 2991人からのべ78679通 | 2012年3月19日~2013年1月23日 | 2013年3月19日 |
2-3. 特定電子メール法第7条に基づく措置命令一覧
消費者庁設立(2009年)から2014年7月までに、特定電子メール法第7条に基づく措置命令が下されたのは、38件に上ります。
3.迷惑メールが行政処分の根拠となる法律
迷惑メール防止二法と呼ばれる2種類の法律があります。一つは特定電子メールの送信の適正化等に関する法律、もう一つは特定商取引に関する法律です。
3-1.特定電子メールの送信の適正化等に関する法律
特定電子メールの送信の適正化等に関する法律は、俗称を迷惑メール防止法と呼ぶもので、主に送信者に対する規制です。事業者が自己または他人の営業について広告メールを送信するケースに、広く適用されます。電子メール送信に関わるトラブルを防ぐ目的があります。
3-2.特定商取引に関する法律
特定商取引に関する法律は、特商法と呼ばれるもので、広告主に対する規制です。事業者が取引商品などについて広告メールを送信する場合に適用されます。商取引における消費者保護や、取引な公正のためにあります。
出典:特定商取引に関する法律
4.まとめ
迷惑メールを撃退する方法としては、法律や制度にのっとり、真っ当な手続きで対抗することが有効だと言えます。その中で最も簡単な手順が、迷惑メール相談センターや日本産業協会の専用アドレスに、迷惑メールを転送することです。わずかな手間をかけるだけで、行政処分という大きな成果を得られます。
みんなの力を合わせて、こうした行政の機関を活用することが、迷惑メールを撃退する最大の効果を生むわけです。