
ワンクリック詐欺に引っかかってしまった場合の最善策は「無視」ですが、そのまま無視し続けていて本当に大丈夫なのかと不安にかられる人も多いのではないでしょうか。
ここでは安心してもらうために、ワンクリック詐欺に関連する法律と、それに基づく考え方を解説していきます。また予備知識として、ワンクリック詐欺の疑いがある場合にとってはいけない行動や、ワンクリック詐欺の手口と特徴、その対策も紹介します。これらを読み進めれば、無視が一番だということが理解できるはずです。
なお、スマートフォンに特化したワンクリック詐欺への対策は、スマートフォンでのワンクリック詐欺|正しい対処方法と予防で解説しています。
1.「無視」することが最も適切な手段である理由
インターネットを通じた取引での詐欺行為を防ぐために、電子消費者契約法および特定商取引法という二つの法律が存在します。この両者がワンクリック詐欺という取引契約を無効にしてくれる、その理由を解説していきます。
1-1.ワンクリックでの契約は法的にそもそも成立しない
1-1-1.電子消費者契約法に基づく契約の無効化
電子消費者契約法・第3条「電子消費者契約に関する民法の特例」では、次の2パターンにおいて契約が成立しないとしています。一つは消費者に契約申し込みの意思がなかった場合、もう一つは、(ミスなどで)契約内容を間違えた場合、です。こうした消費者の意思表示に対して、内容に間違いがないかの確認と、それを訂正できる過程を示さないで行われた契約は無効で、すなわちワンクリックでの契約はそもそも成立しないのです。
1-1-2.特定商取引法に基づく契約の無効化
特定商取引法第14条「顧客の意に反して契約の申し込みをさせようとする行為の禁止」では、ボタンクリックが有料の申し込みになることを表示していない場合と、申込内容の確認と訂正ができる措置がないことを禁止しています。また第11条「広告の表示義務」では、販売価格を始めとする取引の諸条件を表示する義務を示しています。これらのルールが守られていない契約は、無効となります。
1-2.契約が成立していなければ当然支払い義務もない
上記二つの法律により、ワンクリックという行動での契約は成立しませんから、支払い義務はありません。業者の手口として、最初の請求はもちろん、延滞料・損害料などについて請求してくるパターンもありますが、これらも当然ながら支払う必要はありません。
1-3.ワンクリック詐欺で個人情報が漏れる心配はなし
ワンクリック詐欺業者の手口として王道なのが、クリックした人物のIPアドレスやプロバイダ情報などを表示させる方法です。これらの情報は、実際のところ所定の手順を踏めば誰でも簡単に取得できるものです。しかし、パソコンが苦手な人を不安にさせる効果は十分にあり、それゆえこの古典的な手法がいまだに猛威を振るっています。一見して恐ろしい個人情報の特定については、IPアドレスやプロバイダ情報だけで行うことは不可能です。
2.被害に遭った際、絶対にやってはいけないこと
2-1.お金を振り込むのはもってのほか
ワンクリック詐欺の不当な請求に対して、お金を振り込んではいけません。これに応じてしまうと、カモとしてリスト化されるなど、その被害は二次三次と拡大していくおそれがあります。
2-2.間違っても相手に連絡を取ってはいけない
IPアドレスやプロバイダ情報からは個人を特定できませんが、こちらから一度でも連絡を取ってしまうと、あの手この手で個人情報を聞き出されてしまう可能性があります。相手はそうした誘導のプロであり、消費者が罠にかかるのを待ち受けているのです。
2-3.業者に反撃や仕返しするのもNG
ワンクリック詐欺には憤りを覚えるものですが、反撃や仕返しを考えてはいけません。その過程で個人が特定されてしまったり、危険な目に遭うことや、さらなる請求が来ることも考えられます。
3.ワンクリック詐欺の手口と特徴
ワンクリック詐欺の本質は、あたかも個人情報を掴んだかのように消費者を恐がらせ、不当請求に応じさせるという内容です。とはいえ、その不当請求を突きつける手口としては、さまざまな方法が用いられています。
3-1.手口は年々多様化・巧妙化している
3-1-1.サムネイルリンクタイプ
画像のサムネイルをクリックすると不当請求の画面へジャンプするといったパターンが、これにあたります。サムネイルが「jpg」等の画像データではなく、「html」「cgi」「php」「exe」などの場合は警戒するべきです。また、画像や映像・音声を示す拡張子であっても、それが偽装されている場合もあるので注意しましょう。
3-1-2.年齢認証タイプ
年齢認証のボタンをクリックすると、詐欺ページが開くというパターンです。出会い系やアダルトサイトに多く存在します。
3-1-3.アドウェアタイプ
なんらかのきっかけでパソコンにインストールしたアドウェアが、詐欺ページやポップアップウィンドウを開くケースもあります。パソコン起動後やブラウザ起動後などに請求画面が表示される症状や、閲覧履歴やメールアドレス、パスワードなどの個人情報を盗むような働きをするものもあります。
3-1-4.自動ジャンプタイプ
ジャンプタグが仕込まれており、自動的に特定のページが開かれるといったパターンです。入口が複数用意され、それがすべて詐欺ページに行き着くといった図式になっています。
3-2.こんなサイトには要注意! 悪質サイトの特徴
3-2-1. 会社概要や利用規約等の情報が記載されていない
ワンクリック詐欺を仕掛けてくるサイトは、真っ当なサイトの構成とは異なります。会社概要や利用規約等の情報が記載されていないサイトは、詐欺サイトである疑いを持ちましょう。
3-2-2.騙しリンクがある
リンクを押すと、その表示とは異なるページが開かれるといったパターンも、古典的な詐欺サイトが用いる手段です。
4.ワンクリック詐欺被害を未然に防ぐには?
4-1. 怪しいサイトへのアクセスや不用意なクリックはNG
ワンクリック詐欺は、主にアダルトサイトや出会い系サイトといった人間の根本的欲望に対して罠を張る形で存在しています。また脱法、違法商品の販売サイトにも目立ちます。こうしたサイトへのアクセスや、不用意なクリックこそが、ワンクリック詐欺に遭遇する一番の原因となります。
4-2. メールなどに記載されたURLや広告をクリックしない
メールやSNSで言葉巧みにURLや広告をクリックさせ、ワンクリック詐欺に引き込むという手法も王道だといえます。見知らぬところから送られてきたメールは、開封しないこと、開封してもクリックしないことを心がけましょう。
4-3. 提供元不明のプログラムやアプリに注意
フリーソフトやフリーのアプリに、スパイウェアが仕込まれているという事例も増えています。最新のセキュリティソフトで端末を防衛することが推奨されます。またOSを常に最新版にアップデートするなども重要な対策となります。
4-4.利用規約をきちんと読む
何かしらのサービスを利用する場合は、しっかりと利用規約を読みましょう。よく読まずに手続きを進めると、意図しないプログラムのインストールに同意してしまうこともあります。また無料であることを装いながらも、ここに有料であることを記すようなパターンも考えられます。
5.まとめ
電子消費者契約法および特定商取引法という二つの法律により、ワンクリックでの契約は成立しません。よってワンクリック詐欺の脅しに不安になることはないのです。また相手は個人情報を掴んだかのように振る舞いますが、それは単なるポーズです。これらのことを知っているだけでも、心強くなるのではないでしょうか。私たちへのアプローチが巧妙化しているワンクリック詐欺ですが、本質的にはウソの脅しで成り立った古典的な手段なのです。